山本弘『審判の日』

この作者についてはよく知らんです。今回が初読み。内容はわりあいSF寄りな短編を集めた短編集となってます。全体的に文体の軽さがちょっと気に食わない感があって、それでも楽しめたのは個人的集中ベスト「時分割の地獄」のおかげ。
「時分割の地獄」ってのは人口知能搭載の3DCGアイドルが自分に心があることを認めないあるタレントに殺意を抱き、それを実行しようとするというお話。意外な展開とともに“心がある”ってどういうこと?ってな議論がどどーんと深くなる終盤の流れは素晴らしい。スッキリしすぎなラストがちょっと好みから外れているけれど、この短編を読めるだけでもこの本は価値があると言ってよさそう。
他の収録作では「闇が落ちる前に、もう一度」のトンデモ宇宙誕生理論が知能指数低めな文脈で出て来るところなんかが好きかな。「屋上にいるもの」なんかの都市伝説ホラー系の短編は福澤徹三を読んだ後だとさすがにかなり落ちる。