長田弘『ねこに未来はない』

作者の猫飼い経験に基づくエッセイ三本をまとめた本。さすがに作者が詩人なだけあってそこかしこにすんばらしー表現が見られます。おかげで薄い本なのに読むのに時間がかかった。いやあ、「あおのけに突き入れてしまう」とか言えないよなあ。ほとんど全て現実に起こったことが書いてあるはずなのに妙にファンタジーなのも素敵な特質。
エッセイの内容のほうは作者とその妻の前に何匹もの猫が現れ、そして去ってゆくってな感じで、猫が“現在的”な動物であるっていうニュアンスがミシミシ伝わって来る。特に作者夫婦がシャムと和猫の雑種を失ってから再び猫を飼おうという心境に至るまでの過程はささやかに感動的。あと勿論、もぐらの穴を見つめたり布団に飛び掛ってきたりする猫の可愛らしい仕草描写も満載。このへんは読んでて頬が緩むところ。にゃあ。