舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』

彼女の体の中に肉やら臓器やらを食い散らかす虫がいっぱいになって死にそうな男。彼女が死んじゃって死にそうな最中も書き続けて死んだ後も彼女をネタにした小説を書いちゃって?みたいな作家。夢で見かけて好きになった女の子が出会う前に死んじゃった中学生。ろっ骨融合して操縦してた“イヴ”が……な“アダム”の男。えーと、つまり「好きな人を亡くすことは、なぜ辛いのだろうか」*1ってな断片が集まって出来た小説です。
これは、どうだろうな。好き好き大好き超愛してるっていうよりは「好きだったから大好きだけど、でも超愛してるからどうしようもない」って感じ。どこへも行けない気持ちを敢えてどこかへ向ける、その危なっかしさの中にはどうしようもない切なさがあって、それは綺麗に見えるということ。彼女がまだ生きてる時の恋人同士の会話はそれこそ祈りのようで、この強さ、儚さをバリエーション豊富に読めたのは嬉しいな。
全体のまとめ方、引っ張り方、締め方は少々弱い気もしてそれほど好きにはなれないけど、でも面白かったですよ。話としては虫に食われる彼女の話が一番好き。『うたかたの日々』の胸に花が咲く病気の話みたいで。

*1:世界の中心で、愛をさけぶ』のキャッチコピー。