倉阪鬼一郎『42.195 すべては始めから不可能だった』

息子を誘拐され、大会で2時間12分を切れという奇妙な要求を突きつけられたマラソン選手。大会当日、必死で走り続ける彼を伺いながら警察も犯人の意図を突き止めようと奔走するが……というお話。を、レース中の時間経過と対応したページ送りで描く(清涼院流水風)読者参加型ミステリー!って感じかと思ったらだいぶ違った。
だってこのレース、小説全体の4分の1くらいのところで終わっちゃうんですよ。そりゃないぜ!おまけに一応本格ミステリらしく仕込んである伏線とそれに対応した意外な真相も最後の最後のオチで全てパー。でもよく考えてみればこのオチがないと普通のつまらない本格ミステリでしかなかったわけで、それよりはずっとマシか。魅入られた人達がイッてしまう描写は妙な癖があって読み応えがあるし。
まあ何にせよ、この締め方を楽しめる人は少ないだろうな、という感じは否めない小説でした。