西澤保彦『方舟は冬の国へ』

夏の一ヶ月間、ある別荘の中で、見知らぬ女性と女の子の三人と家族を演じて欲しいという謎の仕事を引き受けた主人公。最初はまごつくものの、次第に彼女等に本物の家族のような親しみが沸いて来る。ところが、別荘で過ごすうちにおかしな現象が起こり出し……というお話。
別荘にはロクな本も映像ソフトも無いしテレビも映らなくて、じゃあ、どうやって暇を潰す?よし、妄想推理合戦だ!ってなことになるあたり笑っちゃうくらい西澤らしくて面白かった。それに、スーパーナチュラルな要素が予想外な方向から絡んで来るので序盤は先の見えない展開を楽しめる。でも結局は結局わかりやすいオチに落ち着いちゃって残念。ラストも電波なムードの上に妙に不穏なので感動するどころではないし。
いつもながらの珍名さん大集合っぷりと性根の腐った人間の造形はさすがに安定していて良かった。