日向まさみち『本格推理委員会』

晴れて高校生に進級した城崎修は始業式の日にいきなり幼馴染み・木下椎と共に学園の女理事長によって「本格推理委員会」なるものに引き込まれる。メンバーは二人の他に空手の達人・楠木菜摘とメガネの委員長・桜森鈴音。委員会の今年度初めての仕事として、彼等は学園小学部の古い校舎に女の幽霊が出た事件を捜査することになるが……というお話。
出自がライトノベル寄りな作品なもんで、文体がもう王道ラノベ文体なわけですよ。そこにまず少しげんなり。物語のほうも、無闇に重いネタを持ち込んでいる印象が否めないし、悲劇性を演出するために“悪人”という意味しか持たないキャラを立ててるあたり気に食わない。しかしながら読み終えてみるとラストのどんでん返しが意外に綺麗に決まっていることもあって、なんだか、結構面白く読めてしまった。少なくとも読後感は悪くない。
細かい所で面白かったのは、いわゆる“妹萌え”ジャンルに属する物のお約束としてやたらベタベタしている兄妹の関係に(無理矢理)理屈付けがしてあるところ。それと、あるキャラクターのある性質を利用して、“読者への挑戦”みたいな「ここまでで犯人を特定する手がかりは全部出ました」宣言をさり気なーく作中人物にやらせちゃったりしてるところ。こういう自己言及的な試みはとても好き。