鯨統一郎『CANDY』

一切の記憶を失って見知らぬ世界で目覚めた主人公。ポケットには一粒のキャンディ。三つ集めないと世界が消滅するというそのキャンディを巡り、追われることになった彼は逃げ惑うが……というお話。
いわゆる“壁本”として一部では名高いこの本ですが、いやー悪くないんじゃないの?僕は結構好き。団地街平行棒だの裏切り好意だの、畳み掛けるようなネーミングギャグには洗練されてないこと甚だしいにしても未知の言語センスを窺わせる部分があるし、まともに人間心理を描けない作者の特性がここでは幸いして、アホ展開及びアホ会話もなかなかの疾走っぷりを見せる。鯨作品の中ではかなりスマートな(!)ほうなんじゃないだろうか。
で、読後僕が思ったのは、清涼院流水にこういうの書いてもらいたいなあ、ということなのですよ。面白そうじゃないか?