花様年華

同じ貸し部屋棟の隣同士に越してきたチャウ夫妻とチャン夫妻。チャウ氏とチャン夫人はお互い伴侶同士が不倫をしていることに気づき、それ以後自分達も密やかな関係を取り結んでいく、というお話。えーと、これがウォン・カーウァイですか。この人の映画は初めて見たけど、聞いてた通り映像がとても美しい。何しろ白背景に赤字のオープニングクレジットからしてかっこよすぎ。そして以降はいちいち当然のような顔をして構図だの色調だのが決まった映像がずーっと続くのだからなあ、たまらない。
ストーリーのほうはカットが細かく切られるのと同時に情報も細かく欠落するような虫食い展開で、これがまた“大人の恋愛”的テーマに合っちゃってるのが憎いところ。見ていると「十分ほど前にも同じような場面を見た気がするけど、十分前と比べて空気の濃密さが確かに増している」みたいな印象が積み重なっていくことになります。いや、正直映像が綺麗なだけで退屈しちゃう映画かなあと思っていたのですが、全然退屈出来なかった。巧いなあ。
主要キャスト二人はどっちもフェロモンばりばり。マギー・チャンは凛とした強い表情の中に寂しさが漂うタイプで、トニー・レオンは情けなさの中に強引さが見えるタイプ。この組み合わせは大成功ですな。特にトニー・レオンのダメ男っぷりは個人的にもかなりクるものがあった。ああ、大変だ。