シャロン・シン『魔法使いとリリス』

河出の奇想コレクション並みに人気のハヤカワFT「プラチナ・ファンタジイ」叢書の、えーと、これが第一弾なんですね。主人公の若く理想に溢れる魔法使いオーブリイは変身の術を習いに高名な魔法使いグライレンドンの元へ。そこで出会ったグライレンドンの妻リリスは無表情で無感動ながら魅力的で、オーブリイはだんだんと心惹かれていくが……というお話。
王道ファンタジーにラブを絡めたお話としてよくまとまっているし、変身に挑むオーブリイの心理とか魔法対決の描写なんかはとても面白いものの、あまり好みな話じゃなかった。リリスの心情の動きが男性向けラブコメみたいに都合良すぎるあたりちょっと気に食わなくって。主人公オーブリイにもう少し魅力があればこんな不満は出なかったんだけどなあ。切なくもファンタジー的広がりの見えるオチは好き。