桐生祐狩『小説探偵GEDO』

しがない広告屋・三神げどには、眠ることで小説世界に侵入し、小説世界内人物と現実世界との軋轢を解消する小説探偵(ノベル・アイ)としての顔があった。ミステリー、耽美小説、男泣き系刑務所小説、ギャンブル物、時代小説……様々な小説に入り込み、事件を解決していく彼の前に次第に見えてくる巨大な陰謀とは……というお話。
えーと、どう感想書けばいいものやら。連作という縛りがあるせいかどうか今までのこの作者の作よりは登場人物の行動原理の共感不可能さも意味不明すぎる展開も抑え目……のような気がしないでもない。そのぶん桐生ファンとしては物足りない部分がある。しかしそれでも十二分に異常な価値観を持った登場人物等が普通に冒険物をやってる終盤の違和感は物凄くて、そこだけでもかなり楽しめたのでよし。
集中の個人的ベストはハードボイルド・パロディが白々しくてよろしい「青き追憶の森」かドタバタの方向抑制が危うい「タイトロープな男たち」あたりかな。耽美小説のムードに飲まれそうになる主人公!やおいの定番ネタをそんな風に使うか!な「妖蛾異人伝」は非常に興味深いんだけど混沌としすぎていて勿体無い。これ、秀才系作家にリライトしてほしいネタだなあ。