桐生祐狩『物魂―ものだま―』

人形の呪いが引き起こす残虐な連続殺人!次々と死んでいく少女小説愛好サークルの仲間達!人形愛好家佑里子はパソコンに詳しい京一の手を借り、事件を止めようと奔走するが……というお話。って書くと結構普通っぽいのに、どうしてこの人が書くとこんなむちゃくちゃになりますか。
今作はこの作者の作にしては分量少なめで、ストーリーもわりあい型に嵌ってるぶん、展開の強引さ・わけのわからなさが強調されてしまっていて、凄まじい。読んだ後にほとんど何も残らない気がするけど、リーダビリティバカ高くて一瞬で読める上にこれだけの爽快感と不快感を味わえれば文句なし。ひどく面白かった。と言うか、面白すぎるー!今年度刊行本の個人的トップ1に躍り出ました。
随所に盛り込まれたアイタタタ……な小ネタ(「北九州一帯における初の超地域的オタクのネットワークを作り上げ」ってフレーズはすごい)と言い、人形は人間を乗り物とする利己的遺伝子みたいなものなのよ!とかいう相変わらずのトンデモネタと言い、どいつもこいつもガイキチで、それゆえモラルだの道徳観念だのに酷く奇妙な形で脅かされてしまう登場人物の造形と言い、ジャンク系ホラーとしてのパワーはこれ以上ないという程に突き抜けてます。すばらしー!大好き!
めちゃめちゃバランス悪くて、グロ描写がいまいちな上にラストで明かされる“惨劇”の実態がインパクト弱いのまで全部許す。道を踏み外したB級ホラー映画が好きな人とかは絶対に読むこと。