貴志祐介『硝子のハンマー』

初読み貴志たん。あるオフィスの社長室で社長が死体で発見される。現場は監視カメラなどによって強固な密室状況になっていた。弁護士の青砥は唯一犯行が可能だった専務の弁護のため、防犯コンサルタントの榎本に協力を依頼するが……というお話。
文体と言うか言葉の選び方にちょっと合わない部分があったものの、良質な王道本格ミステリで満足。介護猿だの介護ロボットだののアイテム配置がまずウキウキさせるじゃないか。前半の推理合戦は仮説の一つ一つが十分本ネタになりえるくらい魅力的で面白い。けど、丁々発止のやり取りみたいな点ではいまいち。後半は急に倒叙モノになる趣向と、犯人の人生がまるでこの事件を起こすためにあったかのように運命的に描く展開が面白い。無理矢理分ければ後半のほうが好きかな。
ただ、ラストで顕になる社会的なテーマの取り入れ方は何だかぎこちなく、あまり身に迫るものがなかった。あと、キャラ描写も上手く行っていないような気がして、どうにも雰囲気がオバさん臭い青砥が作品世界内では魅力的な女性ってことになってるあたり特に違和感を感じてしまった。このへんあんま好きじゃないかも。