法月綸太郎『誰彼』

新興宗教の教祖に脅迫状が届き、それに関する捜査を依頼される法月綸太郎(作中人物)。一方、あるアパートの密室状態になった部屋で首なし死体が見つかり……というお話。お馴染みのりりん*1シリーズの3作目。
初読時(たしか小中学生の時)はえらいつまんなかった覚えがあるのだけど、今読んだらやたらと面白かった。何と言ってものりりんの馬鹿っぽさ・滑稽さがいい。新しい推理を思いつくたびにかっこつけて偉そうに披露→大外れして八つ当たり、の繰り返しなんだもの。この滑稽さを強調したおかげで仮説を立てては壊しする本格ミステリの王道パターンに非常な魅力が宿ったというわけだ。いや、たまらんな。ゲーデル問題だの何だのもこういう扱いならうざったくない。名探偵ってやつは全くよう、って感じですか。まさに本格ミステリマニアがすべき仕事ですな。文句なし。

*1:法月綸太郎の愛称。