本格ミステリ作家クラブ編『本格ミステリ04』(その3)

高橋克彦「筆合戦」 △
 「日常の謎」派ミステリとして合格点だとは思うのだけど、この一編だけ読むと説明もなしに唐突に登場するキャラがいたりでどうにも具合がわるい。連作短編集の形で読みたいな。
北森鴻「憑代忌」 △
 何だよ何だよ長々と引っ張っといてミステリとしてのネタはこれだけかよ。事件が発生するまでの流れもモタモタしてるし、「予行演習」と本番の事件との絡みもどうでもいい。あと、キャラ描写が悪い意味でやおい小説みたいだと思った。特に視点人物の内藤って人に関しては情けなさの配分を誤ってないかなあ。文章が読みやすいのはいいんだけど。
松尾由美「走る目覚まし時計の問題」 ○
 シリーズ探偵と舞台の設定がユニークでまず面白い。伏線の隠し方もなかなか。でも、そのわりに真相があんまり意外じゃないのが残念。一番の問題は言葉の取り違えネタが不発なことかな。連作短編集にまとまったら読みたい、と思わせる力は十分。


収録作としてはあと評論が一つあるのだけど、批評の対象となっている本の誤訳を指摘するばっかりで未読者としてはどこを面白がればいいのかよくわからなかったので言及なし。さて、読み終わったことだし、政宗さんのとこの企画に応募してみようかな。