本格ミステリ作家クラブ編『本格ミステリ04』(その2)(背景色でのネタバレ含)

芦辺拓「78回転の密室」 ○
 義理人情の絡み方がいかにもこの作者っぽくて結構好き。事件の真相もパターンとは言えそこそこ意外だし。ただ、腹話術って実際に腹から声が出てるのか?そこがすごく気になった。
石持浅海「顔のない敵」 ○
 社会ネタの扱い方が何ともウザったく共感できない感じではあるものの短編だとそんなには気にならないようだ。ミステリとしての結末には満足。でもやっぱりこの作家は苦手かも。
柄刀一「イエローロード」 ◎
 これのみ既読。でも綺麗さっぱり忘れてたので再読してみた。すると、自分が結構な柄刀ファンだということがわかりました。いやー、相変わらず説明の下手な文章だし、いささかセンチメンタルにすぎるのでは?と思いつつも何だか微笑ましくて支持したくなってしまう。しかもこの微笑ましさがロジックへの納得度を高めてる気もする。それはとても素敵なことだ。でも、これも連作中の一編として読まれるべきものだよなあ。じゃないとあのネタが……。
東川篤哉「霧ケ峰涼の屈辱」 ◎
 メイントリックがショボい。けど見せ方が面白いので良し。他方、本筋とは関係ないもう一つのネタの見せ方は下手だなあ。これじゃ「ふーん」で終わっちゃう。まあ、何だかんだと言いつつアンソロジーの中にこういうユーモア色の強いのが一編あるとホッとしますな、ってことで評価は甘め。