本格ミステリ作家クラブ編『本格ミステリ04』(その1)

せっかくなので各編ごとに軽い感想書きます。あらすじ紹介は無しで。◎○△×は好ましさの度合い。

横山秀夫「眼前の密室」 ○
 いつの間にか密室殺人が起こっていつの間にか解決されちゃったーってな読後感で、本格ミステリとしてはちょっと物足りないものの、やはりこの作者の作ということで「働く男達」小説として面白い(この作に関しては主要キャラに女性がいるのだけど)。新聞記者さん方の仕事っぷりが厳しくも爽やかで微笑ましい。
・青木知己「Y駅発深夜バス」 △
 文章はぎこちないし不必要に描写しすぎな部分があったりで小説としては全然こなれてない。でも、時事ネタの強引な取り込み方に見られる稚気はいかにも本格ミステリ的で支持したい……と一旦は思ったものの、明らかに蛇足な最後の数行に引っかかって結果評価は低め。
鳥飼否宇「廃墟と青空」 △
 提示される謎もその解決もユニークなわりに安定した面白さ。でも、この話でやり込められる人って全然悪い人に見えなくて、そのへんで少し不快感を感じてしまった。そこが不満。一つ気になるのは、これって連作短編集の中に置かれることによってサプライズが増すタイプの短編じゃないのか。先にこれだけ読んじゃったよどうしてくれるんだ……。
法月綸太郎「盗まれた手紙」 ◎
 さすがに巧い。高田崇史の千波君シリーズにちょっと趣向が似てるけど、あれよりもずっとスマートにひねくれていて、こんな短い話でもちゃんと渋い雰囲気が出てるのが違うところ。まあ、パロディ物だそうだそうだけど。