三津田信三『シェルター 終末の殺人』(背景色でのネタバレ含)

核シェルターの取材に赴いた作家・三津田信三がまさにシェルターに入ろうとしたとき空に不気味な閃光が!シェルターに逃げ込み、共同生活を営む三津田等の間で起こる連続密室殺人。外は放射能でいっぱい、世界の終末だってときに犯人はどうして殺人なんか?というお話。あらすじは面白そうだったのだけど……そもそも全然“終末”感を匂わせられていないので前述の魅力的な心理的謎が立ち現れてこない。なので、始まってしばらくすると(主人公がたまにあっちの世界に行っちゃうのとマニアックなホラーに関する薀蓄を除けば)普通の孤島モノ・雪の山荘モノな雰囲気になってしまってるのですねこれが。まあそれでもオチが面白ければいいやと思って最後まで読んでみたら……なんだこのトリック・その意味づけ共に10年くらい古いオチの付け方は!いやあさすがに現在の国内ミステリ界ではこれじゃ通用しないでしょう。つまらん。
結局面白かったのはホラー薀蓄くらいかな。あの“名探偵”の設定をもうちょっと工夫しとけばいくらかマシになったのに。三津田信三って前々から読んでみたかったのだけど、この分じゃ他作品にもあんまり期待できなそうだなあ。あ、それとこのオチにはちょっと『アイデンティティー』(映画)を思い出した。タイムリーにならなくて良かったですね。