伯方雪日『誰もわたしを倒せない』(背景色でのネタバレ含)

プロレス界を取り巻く殺人事件をネタにした連作本格ミステリ短編集。プロレスミステリだなんていう色物と見せかけて、実は本格ミステリ読みこそ楽しめる変な試みを盛り込んだ凝った構成の短編集なんですねーこれが。各短編が何やら妙な感じで繋がってたり、読み終わった後「結局探偵役は誰だったの?犯人は?」という印象が残ったりするのが面白いです。「最強」というテーマの扱い方も。ま、この作者はこれがデビュー作だということもあって技量的にはまだまだな感じなのですが、結構期待できそうな新人が登場したと言ってもいいんじゃないかなあ。僕は支持しよう。
あくまで各短編の繋がりを楽しむ作品なので、一編一編を取り出して単独で評価するといまいち。第三話なんて、今時こんな性別誤認トリックの使い方した時点でアウト気味ですよ。でもそれも第一話のハード・ゲイテイストがミスリーディングとして働いているという妙な事態によって「アリ」になっているのです。面白いなあ。
あと、笹川吉晴という人による解説が何だか凄すぎることになってます。真犯人はアントニオ猪木だったんだって!わけわからーん。でも激しい磁場を感じる力のこもった解説なので必読かも。こないだ乱歩賞を受賞した『マッチメイク』より今作のほうがプロレスマニア的にはずっと満足、とかいう意見は普通に興味深いしな。