グッド・ガール

退屈な夫、退屈な仕事、退屈な人生……全てにウンザリしていた主人公ジャスティンは同じ職場の年下男ホールデンと熱烈な恋に落ちていく、というお話。こう書くとまるで一頃流行った不倫モノみたいだけどそんなんじゃないのです。だって、ホールデンって本名トムなのに『ライ麦畑でつかまえて』の熱心な読者だからこの名前名乗ってるような痛々しいモラトリアム青年なんだよ!ジャスティンだって最初ホールデンと話すときに「この職場大嫌い。銃乱射犯の気持ちがわかるわ」とか言っちゃうんだよ!うわ、何だこれ、暗い青春モノの変形か?と思いきや、話はなかなか滑稽にして物悲しい感じになっていき、最終的には主人公以外のほぼ全ての登場人物がギャグキャラに成り下がり、主人公は自分が「普通の人」であることを自覚し認めるのだった。おお、これはなかなかいいじゃないか。好きだ。
でも物語の締め方には若干不満がある。「奔放な恋よりも平和な日常を選ばなければならなかった哀しい不倫女の話」ではないということをもっと強調すべきだったのでは?締めで発露する夫の真のキャラクターが効果的になってなくて勿体無い。あと、夫の親友ババが主人公に迫る動機はもっと身も蓋もないもののほうが良かったな。あれでは理屈っぽすぎる。
キャストは概ね好演。主演のジェニファー・アニストンは結構なお疲れぶりだし、夫役のジョン・C・ライリー、ババ役ティム・ブレイク・ネルソン(どっかで見た顔だと思ったら『オー・ブラザー!』(→感想)三馬鹿トリオのチビか!)、警備員役のマイク・ホワイト(脚本もこの人)、誰をとっても滑稽で情けなくてよろしい。更に特筆すべきなのはホールデン役のジェイク・ギレンホール!お前、ほんといい加減にしろよ(褒め言葉)。ホールデンは痛々しいキャラとしてはありがちなキャラ設定で真新しさはないのだけど、この人が演じてるとマジモンに見えるので説得力がバカ高。泣きながら主人公に「君はふしだらな女だ!」とか言うシーンなんて爆笑物ですよ。しかしこの人これからもずっとこの路線で行く気なのかな。大丈夫なんだろうか。