角田光代『まどろむ夜のUFO』

わー、角田光代なんて読んじゃった。えーと、こちらは「まどろむ夜のUFO」「もう一つの扉」「ギャングの夜」の３篇を収録した中編・短編集となってます。いずれもフラフラとフリーターやってる女性の生活にある変化が訪れ、以後少し奇妙なものになっていく日常を描いたもの。なんだけど、あまり平和ではなく、一見ごく普通の主人公がゆるゆると追い詰められ、自分の精神がもうどうしようもないほどひどいことになっているのに気付かされる、という話に読めてしまった。特に「もう一つの扉」なんかはその傾向が強い。これが集中の個人的ベストかな。何かを知ったせいで、いつもならなんてことない状況を「全てが去っていく」と感じてしまうようになってしまった、というような筋で、この追い詰められ具合は中々に読み応えがある。
が、作品集全体としてはそんなに気に入ったわけではなく、あまりピンと来なかった感が否めない。文章表現のセンスが根本的なところであまり肌に合わなかった気もする。変な言い方だけど、雰囲気が無感情さに欠けている感じ。表題作もキャンプファイヤーの場面の何とも言えない虚しさは良かったけど、サダカくんという几帳面キャラを「安定してるけど変化に乏しい日常」の象徴として使ってる（ように思われる）安易さがどうも納得いかないし。まあ、若干期待外れだったかな。