Dolls

北野武の映画なんて初めて見た。これは最初、いかにも人工的な絵面とかセリフ回しにかなりの違和感があって、「これは作り物で、現実じゃないんですよー」的アピールはもういいから!わかったから!と少し辟易しながら見てたのだけど、半分過ぎたあたりからそれほど気にならなくなった。作り物っぽさよりも綺麗さのほうが先立って感じられるシーンがちゃんとあるし、うーん、面白いかも?赤い紐が引きずられる絵面はとても好き。あの二人が体を繋いでるのは紐を引きずるためであるように見えたくらい。
微妙に錯綜しつつ語られる三つの悲恋エピソードは話としてはベタな気がするものの、省略の仕方、時系列の並べ方が変なせいで妙な寂しさが醸し出されている感じ。そしてその変な語り方に技巧的な嫌らしさがあまりなく、ある種の切実さが感じられるのがいい。深田恭子演じるアイドルとその追っかけのエピソードは特に素っ気なくて好き。
キャストでは菅野美穂が物凄く巧い気がする。冬のロッジの前でペンダントを……のシーンでの表情の変化はまさに神業。こいつ、完璧にシュミレートしてやがる!という感じ。松原智恵子も普通なら痛々しくなりそうな役柄を独特に演じていて良い。深田恭子も意外に悪くなかった。演技の巧拙でなく、使われ方の点で。