蘇部健一『届かぬ想い』

幸せな家庭を失った作家志望の男が再び掴んだ幸せ。だが、やっと生まれた娘が重病にかかっていることが発覚。娘を救うために彼が選んだ手段は、タイムマシンだった……!というお話。惜しい!妹ネタにしておけば流行りモノっぽい感じだったのに!じゃなくて、えーと、どう評価したらいいのかよくわからない短編群を除けば、今までの蘇部たんの作品の中で一番マシなほうなのではないだろうか、これ。なーんかどっかひっかかる描写を並べておいて、それを伏線として回収、ジャーン、意外な真相が!という形が一応整ってるところが(蘇部たんとしては)画期的。娘の病気にまで意味があるところにはちょっと感心した。主人公の男いくらなんでもガード緩すぎ、とか、真相説明部分をもう少し上手く物語の中にはめ込もうと思わないのか、とかツッコミ所はたくさんあるけど、これでもいつもに比べるとだいぶ少ない気がする。まあ、短いから粗が目立ちにくいだけかもしれないけど。
あとは唐突に時代劇やら何やの話題が出てきたりする会話文、あれってギャグのつもりなんだろうけど、ギャグとしてもう少しスマートになればねえ。地の文の説明下手に関してはもう何も言わないから、そのへんの改善に期待。しかしやっぱり出てきたか『夏への扉』……。