矢野龍王『極限推理コロシアム』

せっかくの第30回メフィスト賞受賞作だってのにこれか……。別に期待はしてなかったけど、やっぱりメフィスト賞が勢いを取り戻すきっかけになるようなものじゃなかった。がっかりだ。淡々と、つまらないです。
冒頭で語られる“推理ゲーム”の基本設定、「二つの密閉された館でそれぞれ連続殺人事件が起き、館に閉じ込められている二つのグループはパソコンで情報交換をしながら両方の館の事件の犯人を指摘しなければならない。もし間違ったり相手グループに先に正答を出されたら、グループ全員死亡!」は確かにケレン味十分。でもそれだけ。その魅力的な設定を活かせているとは言いがたい。根本的に日本語の扱い方が不自由なくせに妙に色気づいてるような文体は(まあ国内本格ミステリじゃよくあることですなってことで)大目に見るとしても、どうにも計算ズレまくってるようにしか思えない。
まずゲームの主催者からの“ヒント”の意味がもう説得力皆無だし、オチはミエミエって言うか、そんな安易なオチにはしないだろう、と判断して読者が真相の可能性から最初に外すタイプのオチ。だからある意味では驚けたんだけど、そんな驚きはいらん。勿論キャラの立ち具合なんて望むべくもない。なんだか変な方向にキャラ描写の抑制が効いてしまっていてちょっとエロかったけど、そんなエロは(略)。妙にセンチメンタルなラストも白けるだけ。いやあ、不満でいっぱいですわ僕。もうちょっと、もうちょっと面白いかと思ってたんだけどなあ……。