歌野晶午『ROMMY 越境者の夢』(背景色でのネタバレ含)

う・た・の! というわけで、また一つ歌野の未読本を片付けました。こちらはレコーディングスタジオで起きた殺人事件の記述にROMMYというミュージシャンの半生記を絡めてみました、という感じの小説。一人の変わった人物が人生を美しくかつ速足に駆け抜けた様をテーマとしているのはわかるんだけど、別に歌野にはそんなもの求めてないしなあ。どうにもテーマが邪魔に感じられてしまうのは、最後の大ネタが“意味”を持ちすぎてしまう種類のものだったところに問題があると見た。そのせいでミステリとしてのネタとテーマの結びつきが強すぎるように感じられてしまうのだ。あー、これはあれですね。今更性別誤認トリックなんて使うのなら扱いは慎重に、ってことですかね。まあ、歌野のこういう無理に大ネタかまそうとするところは嫌いじゃないけど。
あと、最後の大ネタに関しては、伏線についても物足りなさが残る。伏線の張り方が地味すぎて真相を知ってもあんまり納得できないんだもの。ROMMYの音楽活動に関する描写がいちいち寒々しいのは古臭い、ダサい、というレベルの言わば“普通”な寒々しさなので大して気にはならないけど、ああも連発されたんじゃやはり少し萎えるかな。