タイガーランド

そろそろアメリカの敗色が濃厚になってきた時期の新兵達の訓練施設での生活を描いた映画。タイトルのタイガーランドってのは新兵達が最後に送られるヴェトナム戦争の戦場を模した訓練場の名前。面白い!というような感想を抱かせるものではないけどとてもよく出来ているし、間違いなく賞賛されるべき何かを含んでいる感じがする。しかし感想が書きにくいなこれは。
テーマ性の濃さが察せられるものの、押し付けがましくなく、一方的でないところがいいと思う。教官達や主人公等と敵対する兵士もストーリーの展開上必要な敵役としてあるのではなく、ただ「こういう環境の中でこういう行動をとる人である」ということが熱を含みすぎないさらりとした描き方で、しかしそれ故切実さが籠もるような描き方で描かれているという感じ。映画の中心人物となる人道主義的不良兵士ボズにしたって、仲間を救う行動がわりとせこいものとして描かれている気がする。でも最後まで見ると彼は紛れもなく素晴らしい人物として心に残るのだ。ラストちょっと呆気ないけど、そのへんも含めて輝かしくも虚しい青春回顧話みたいな味わいがある。
キャストでは主役のコリン・ファレルが抜群に良くて他はどうでもいい感じ。脇役がそれほどいい演技をする必要のない映画だという気がするので、別にいいのだけど。それでもやっぱりコリン・ファレルの顔は苦手だ……。あと、カメラが揺れすぎで見ててちょっと疲れました。