リプリー

前半は自意識過剰な不細工ゲイが暴走してとんでもないことを引き起こすサイコ・ホラー、後半は全然盛り上がらない倒叙サスペンスというお話。いやあ、素晴らしく面白かった!前半は!金持ちのぼんぼんジュード・ロウの美しさと、彼に憧れる野暮ったい貧乏人マット・デイモンの気持ち悪さが両方とも神業的なまでに引き出されていて、この二人の到底同じヒトという種とは思えない品種差がぐんぐんドラマを引っ張ってってくれる感じ。特にマットの気持ち悪さは拍手もの。ビバ!まさにこちらが欲しいときにこちらが欲しい種類の気持ち悪さを見せ付けてくれる。あまりに彼が思った通り(いや、それ以上)に動いてくれるので、何度か爆笑してしまった。あー楽しい。
しかしその神業的気持ち悪さも後半になるとうまく発揮されなくなってしまうのだった。マットの気持ち悪さの原点は「ジュードかっこいい……」という羨望の視線と彼も自分を愛してくれているという勘違いにあったのに、ジュードがいなくなってしまってはねえ。おまけにマットのキャラは破滅型なので、後半の倒叙物ストーリーの主人公としてはとっても都合が悪い。これがサスペンス感の欠如を生んでいるよなあ。と、そんな風に後半はつまらない展開が続くのだが、終盤、ジュードに代わる新しいマットの気持ち悪さ発動装置的人物が登場!わーお!と喜んでいたら、あ、あれ……?なるほど、そういう風に終わりますか。いや、このオチは結構好きだ。しかしそこに至るまでにつまらない倒叙サスペンスをこんなに長々と見せられては褒めるわけにいかない。せめてマットの行動原理がもう少しわかりやすければ良かったのだけど。
美しいジュード・ロウと気持ち悪いマット・デイモンが見たい人には何をおいてもお勧め。