近藤史恵『二人道成寺』

不審な火事が原因で意識不明となった歌舞伎役者の妻・美咲。その背後には岩井芙蓉、中村国蔵という二人の名役者の確執と、秘められた愛憎劇が……というお話。待望の歌舞伎シリーズ新刊!というわけでかなりのワクワク状態で読み進めたものの、あらー、今回はどうもオチが弱い感じですね。最初から読み直したくなるような捻り方ではあるものの、意外性もショック性もそのオチによって浮かび上がる“絵”の綺麗さも今一歩強度に足りない。悪い意味ですらすら読めてしまった。
勿論、丸っきりつまらなかったわけではなく、芙蓉の番頭、兼美咲の友人である実の視点を取り入れているところなんて巧いと思うし、耽美ちっくでありながらも安易にJUNEに走らないところなんて相変わらずでちょっと感心する。まあ、今回はシリーズキャラの関係性にもほとんど発展が無かったし、また次回作に期待するということで。