江戸川乱歩『黄金仮面』

創元推理文庫の版で読んだんですけど、安っぽくもおどろどろしい挿絵が良いな。挿絵にスペース取られるせいで文章が変なレイアウトで入ってるページもたくさんあって、そういうところも素敵だ。
感想としては、とにかく乱歩のあの文体を久しぶりに読んだのでそれだけで楽しめた感じ。登場人物に干渉する寸前で踏みとどまっているナレーションのような語り口が良い。あとは、とにかく荒唐無稽な展開ですな。明智小五郎(意外に余裕がない感じ。すぐカッカする)と対決する怪盗・黄金仮面の正体はなんと某有名人物だった!だの、黄金仮面のアジトはあの有名な場所だった!だの、黄金仮面が盗んだのはあの有名な宝物だったのだ!だの、次々つるべ打ち。感覚が麻痺してきます。普通の意味で意外な展開は無いのでそれほどカタルシスは味わえないし、本格ミステリ的なトリックも微妙な使い方であるものの、怪奇とユーモアがない交ぜになったような雰囲気が楽しいので良し。頭空っぽにして読めます。