イン&アウト(背景色でのネタバレ含)

ハリウッドの大スターとなった元教え子が、ゲイの兵士役を演じて勝ち取ったアカデミー賞授与スピーチで「お世話になった先生に感謝します。彼はゲイです」と発言したからさあ大変。主人公は周りの誤解を解くために奔走するが……みたいなコメディ。こ、これは素晴らしい!……クライマックスの卒業式のシーンを除いては。あれはゲイを馬鹿にしてるように見えかねない危険なシーンになってしまってるぞ。肝心な所で外したな。ともあれ、大体において素晴らしい!何故ってこの映画は、とってもクレバーなやおい映画として見ることができるんだよ!
えー、どういうことかと言うと、説明が難しいが、実はやおいの王道なストーリーを語りながらも、正にやおいたる所以の場面に差し掛かると急に視点が当事者からずらされ、周りの人から見た彼等の様子が描かれるのみで、当事者の心理描写は一切されないという一見やおい性を包み隠すような演出によって、凡百のやおい創作物より更に深くやおいである、ということになってしまっている感じ。いやあ、素晴らしい。これは映画として面白い理由にもそのまま繋がると思う。
キャストがまた素晴らしい。主演のケヴィン・クラインカミングアウトする前とした後では雰囲気が違って見える好演だし、TVキャスター役のトム・セレックは最初はやたら怪しいのに終盤とにかくかーっこいい!惚れた。ジョーン・キューザックは哀れなだけにも身勝手なだけにも見えない演技で役柄に深みを与えているし、マット・ディロンは「人気ナンバーワンセクシー男優」の役にキャスティングされている時点で面白い。かなり歪な所があるけれど、本当に良い映画だと言っていいと思う。すごく好き。