初恋のきた道

父親が死んだと聞いて生まれ育った村に帰って来た語り手の青年男性。彼は「村の伝説」となった父と母の馴れ初め話を思い出す、というのがオープニング部分。以下はチャン・ツィイー演じる村一番の美少女(語り手の母)が町からやって来た先生(同じく父)にのぼせ上がって……というストーリーが語られる。つまり、この恋愛ドラマのほうのオチは最初から見えているわけです。にも関わらず見ててかなり動揺させられるし、グッと来る。よく考えればチャン・ツィイーの恋する乙女っぷりは丸出し過ぎてはしたないものであるのに、これが映画の中ではちゃんと“美しいもの”として見えてしまう。昔の中国の田舎の村っていう色気の無さそうな舞台において、「先生が私の弁当を取るように近くに置こう」なんてなきめきイベントを発生させる手腕もすごい。
何よりいいのはチャン・ツィイーの走り方(の撮り方)。走るシーンがやたら多くあるのだけど、中でも先生を初めて見た日、ウキウキ気分で家に帰るシーンののそのそした走り方は凄まじく絵になっていて、第七感あたりにダイレクトに訴えかけてくるものがある。ラストにこのシーンがもう一度挿入されるところはこの映画一番の泣き所でしょう。なんとも綺麗な映画でした。色とか。