津原泰水『ルピナス探偵団の当惑』

少女小説のレーベルから出てた連作二編に加筆すると同時に新たに一編を書き加え、まとめたもの、らしい。つまり、「津原泰水が」「コバルトで」「本格ミステリを書いた」ようなものだな。すごい!読むしかない!というわけで読みました。
うん、期待通りの面白さ。少女小説っぽい文体とキャラに嫌味がなくていいねえ。特に少年名探偵ってのは嫌味なキャラになりがちだけど、そこんとこも軽ーくクリアできてる。何より普通なようで普通でない主人公のポジションの置き方が巧い。この配置の仕方によって、主人公と女友達の友情も主人公→憧れの男の子の思慕の情もベタベタ感が軽減されてるというわけだ。キャラモノとしてはよく計算されているという感じ。この時点で娯楽小説としては文句なし!ちなみに僕は庚午vキリエ推しですね。
さて、本格ミステリとしてはどうか?というと、冒頭に置かれる謎はどの収録作でも魅力的なものの、それに対して与えられる解決もそれほど魅力的かというと微妙なところ。「あー、なるほど」的な解決が用意できてるのは第一話くらいかな。でもツイン探偵制が効果的に使われているので、みんなであーだこーだ推理を練る場面がなかなか面白く読める。殺人事件そのほかを扱いつつも爽やかな読後感を得られるようになってるのも少女向け小説として正しいな。続編が出るなら是非読みたいけど、新たに書き加えられた第三話が一番出来悪い印象なので、それほど期待できないかも。