嶽本野ばら『下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』

ガガーッと一気に読めて実に爽快。饒舌調のユーモア混じり一人称語りで書かれた小説が好きな人には是非おすすめしたい。これはタイトル通りド田舎・下妻に住むバリバリのヤンキー娘とヒラヒラのロリータファッション娘(語り手)が、友情と呼ぶにはいくらなんでも甘さが足りない、でもやっぱり少しだけロマンチックな強い関係を築くまでの過程を描いた変調青春小説。あらすじだけ見るとヲタクコミュニティの中でのいろいろな関係性を問題にした最近よくあるタイプの青春小説に近そうな感じもするけどそんなんじゃなくて、主人公二人の精神構造はあくまで“孤高”であり、全くベタベタしていないのだった。これが良いところかつ特徴的なところ。
とにかく強力に面白いのだけど、一応文句も付けておくと、濃いネタをこれでもかとばかりに詰め込んであるわりに読後感がサッパリしすぎ、まっとうな青春小説としてまとまりすぎなのがちょっと物足りなくもあるような。あと、二人の関係の強靭さを当人達と読者に同時に認識させる役割を持ったラストの重要なシーンが若干滑ってる感がある。あそこで延々イチゴに桃子の弁護を(それも引き合いに出す形で)させたのはこの物語のオチとしてあまりふさわしくないのではないかな。
深田恭子がロリータ娘役をやる映画版も楽しみ。