ポール・オースター『リヴァイアサン』

ある作家が作家サックスと自分とその友人達との間に起こったことを記す半生紀のような……と言うよりは、彼等の間の関係性についての伝記のような話。うーん、どうもオースターはいまいち肌に合わないみたいですよ。こないだ読んだ『偶然の音楽』(→感想)もそうだったのだけど、言い方を変えつつずーっと同じことを言っているような感じがしてしまって、ちょっと退屈なのだな。この小説の空気は基本的に「虚しい」で、後は「楽しい」も「不思議」も「彼女は変わった人だ」も全部「虚しい」のバリエーションでしかないと言うか。いや、「全部『虚しい』のバリエーションでしかない」というそのことが嫌なのじゃなく、どういう風に「全部(略)でしかない」のか、そのニュアンスがなんだか趣味じゃない。
この小説に好きな箇所があるとしたら、後半、主人公がサックスから聞いた話をそのまま書き留めてるところかな。全体の中でこの部分で語られるサックスの体験談だけ、わかりやすくスリリングだから。つまづくことによって暴走し出すストーリーはちょっと面白い。加えて、その体験談の記され方は前半の記述と比べて変化してる部分が大きく、なんだか急に物語の見通しが悪くなってもやもやーとしたまま小説自体が終わっちゃうのもわりと好きだ。