横山秀夫『第三の時効』

横山秀夫初読み。読む前の印象どおり地味だけど、リーダビリティはちゃんとある。すらすら読めます。ジャンルとしては警察小説ということになるんだろうけど、その中でも僕なんかはキャラクター小説としての側面が気になるわけで、そこらへんわりと気に入った。特に連作のポイントとなる強行犯捜査一課一斑、二班、三班の各班長のキャラ立てが上手くいってると思う。互いにライバル関係にある各班がそれぞれに性格が捻じ曲がった班長のもとで凌ぎを削る……ってな感じのシチュエーションに燃え。
集中の個人的ベストは表題作の「第三の時効」かな。楠見班長萌えなので。「密室の抜け穴」は密室というモロに本格ミステリなネタを扱いながらも落とし所をちょっとずらしてるのが好印象。「沈黙のアリバイ」もサプライズ演出が上手くて良い。性格捻じ曲がりな班長達が妙に人間味を出しちゃうエピソードはあまり面白くない。ヒドい人でいいのに。そこが魅力的なんだから。
あと、こういうわりとリアリズム系の警察小説って読みながらつい、「どこまで現実の警察組織の様子に即しているのか」とか余計なことを考えてしまうものだということを今回思い知った。下手に警察用語とか出てこないほうが集中できていいのかも。知らんけど。