イザベル・ホランド『顔のない男』

えー、巧いですね。これってある面から見ればソフトやおい小説なんだけど、読んでる間はそんな俗っぽい概念が浮かばないくらいの雰囲気。少年がひと夏の間に体験する、同性愛っつーものを通して成長する様を丹念に丹念にかと言って変に偏執的になることなく、さらさらと優しく描いた実に良く出来た小説。少年→中年な構図に萌えるやおらー女子には勿論、男の子にもお勧めだ。だってこの小説は確かな普遍性を持った青春小説でもあるのだから。
ただ、僕の好みからするともうちっとドラマチックな展開をしてくれたほうが良かった気もするのだなあ。テーマは重いものであるわりにわりと地味な話になっちゃってるのはちょっと勿体無いかも、と思った。まあでも別にこれはこれで何の問題もないです。
ちなみに映画化もされてるらしいんだけど同性愛要素を取っ払ってるとの噂で、それはどうなのかなあと思いつつちょっと見てみたいかも。メル・ギブソン主演の『顔のない天使』ってやつですね。