アラン・アーキン『レミング物語』

『カウンセリング熊』っていう本は大好きな本のうちの一つなのだけど、その話はこの『レミング物語』の続編という位置づけのものだったりした。でもこの本は読みたいなあと思いながらもなかなか読む機会がなく、今回やっと読んだという事情。
うん。これは怖い。恐ろしい話だと思う。レミングの習性ってのは有名ですね。数が増えると集団で海に飛び込んで自殺するってやつ。その習性をレミング達は本能的な部分で受け入れ、盲目的に従っているのだけど、ある若いレミングがふとこの習性に疑問を持ってしまった、という話。その“正気に返った”レミングの目から見た他の仲間達の行動の描写が実に恐ろしい。本能にはやはり抗えないのですよ。
でも主人公のニーニはそこに抗って抗って抗って、抗ってしまったのですな。その結果彼を待っていたのはむにゃむにゃむにゃ、って感じで。まあ要は若者のアイデンティティー確立の話なんだけど、それだけじゃない。もっとさりげなく本質を抉るような部分があるのだなあ。そして絶望と希望の両方を含む旅立ちの話でもある。これを読んだら必ず『カウンセリング熊』も読みましょうねー。やたらに象徴的で、わけわからんまま泣けます。