筒井康隆『驚愕の廣野 自選ホラー傑作集2』

思ったとおり、読んだことあるのがいくつか混じってた。筒井を読んだのはかなり前でほとんど覚えてなかったりするので。
で、これがホラー?とか思いつつもやっぱり筒井は面白かったですよ。「魚」はいかにも筒井らしい得体の知れない不穏さが襲ってくる話だし、「冬のコント」の実験的なことやりつつもユーモア混じりでかつ、絶望的に空虚な感じもいいし、「傾斜」の体がどっかもってかれそうなシュールさには思わず拍手したくなる。
でもやっぱり集中ベストは表題作「驚愕の廣野」かと。これはすごい。何と言うか、虚しくて儚いけれどもその虚しさ儚さの中にちょっとだけ救いがある、圧倒的な“永劫”感を描いたものだという感じがした。ある種の人達はこれ読んだら泣けるんじゃないかと思うよ。だってある意味で、こんなに切ないおとぎ話はないのだからー。