飛鳥部勝則『ラミア虐殺』

待ちに待ったアスカベ新刊!なのだけど……ぐわ、これは。こーれーは。さすがにどうなんだろう、これは。とりあえず今までの飛鳥部作品の中で個人的にワーストって気が。もうちょっとしたら気持ちも変わるかもしれないけど、今はそう思う。
いや、飛鳥部らしくて好きだなあ、って思うところもある。主人公がよりによってカブト虫人間だったりするところとかに現れてる歪んだ感性とか好きですよ。しかしやはりメインの連続殺人のオチのつけ方が、何と言うか、作者がここに込めたものが存在するのはわかるのだけどこっちまで届かない、って感じ。こっちまで届くような書き方もあったはずだと思うから、評価は低くなってしまう。
それに読んでていまいち楽しくなかったってのもある。登場人物全員がそれぞれ別の世界に生きてるみたいで全く噛み合ってない雰囲気はいつも通りだけど、それらの登場人物が交わす会話の中に漂うものがあまりない。不自然なセリフにポエジーを含ませるのは飛鳥部お得意のはずなのになあ。前半なんか特に詩情より安っぽさのほうが上回っちゃってる感じでどうしようかと思った。
まあ中盤以降は飛鳥部節がある程度復活してるけど……やっぱりどうしてもオチが。物語にどうしようもなく要請されているオチが持つ切実さ、は持っていないように感じちゃったもんだから。呆気ないのはいつものことだけど。
あ、あと終章は不要。そこでもすれ違ってなきゃ。それにその人は「少女」じゃないし(これもたぶん不満の原因の一つ)。