ロバート・J・ソウヤー『フラッシュフォワード』

ソウヤー初読み。ミステリ読みにも人気があるSF作家、というイメージを持っていたのだけどこりゃあミステリ的な要素がどうこうって言うより先にエンターテイメントとして極上。SFに慣れてない人でもすらすら読めるーって感じ。
で、それは何故なのかって言えば、やはり全人類が21年後の未来を2分間だけ見てしまうっていうメインのネタの面白さが全てを引っ張ってってるんだと思う。もちろんそのネタの使い方も巧くて、こういう事態に陥った場合本当にこんな行動をとるかな?とか考えさせないくらい怒涛の展開でその未来視の後の人間達を書いてく。それぞれの意味で悲惨な未来を見てしまった主な視点人物二人にそれぞれ「未来は変えられないと考えているのでただ苦悩するだけ」「未来を変えようと必死で奔走する」という二つの役割を分け与えたとこなんかも巧いなあ。これっていわゆるタイムパラドックスネタなのだけど、こんなアプローチの仕方がもあったのだなあと感心することしきり。
しかし後半どうも納得いかないところが頻出。タイムパラドックスネタの落とし所は別にあれでもいいのだけど、そこに持って行くやり方がなんだかとっても力技って気が……。あと、ラストに描かれる実にトンデモな光景についてはいきなりハードSFになったみたいで置いてかれ気分。うーんすっきりしない。でもまあ最終的に人間の卑小さ、それゆえの輝き、みたいなところに話が落ち着いた気がするのでよしとします。第二部で終っとけばなあ、と思ったりもするけど。