西澤保彦『依存』

うーん、やっぱり自分にはこのシリーズがいまいち肌に合わないみたいだ。このシリーズで作者がやろうとしてることはきっと、キャラクターを深く掘り下げて描写することとかじゃなくて“心理”を描くことだと思う。だから登場するキャラクターはそのテーマとなる心理を描くための駒にすぎない扱いになってるのだな。って、なんだ、これっていわゆる「人間が描けてない」ってやつじゃないか。いや、別に「人間が描けてな」くたっていいのだけど、こういう風な描けてなさはなんか嫌だ。あ、今回について言えばウサコの自己分析は面白かったけど。
あと、出てくる「子供」は例外なく「親」に虐げられていて、「女」は例外なく「男」に虐げられてるってのも逆の意味で夢見過ぎな感じがしちゃうんだよなあ。これじゃあ実際にそのような関係性の中で問題を抱えてる人から見たら“ごっこ遊び”に見えかねないと思うのだけど。こういう小説を書くという行為が。
なんだか嫌いなところばっかりみたいに言ってるけどじゃあなんで自分はこのシリーズを一応追いかけてるのかって言えばそれは、もう圧倒的に読んでて楽しいからですな。こんなに読みやすくてページをめくる手が止められない小説はそうはないもんで、ついつい読んじゃうってことで。この『依存』なんて特に、長編というより連作短編みたいな感じでいくつもの謎が次々に提出されて、その謎が解決されたりされなかったりするあたりがもう!純粋にミステリ要素を期待する読者に対して結果的にすっげえ意地悪で、全くたまらんですよ。ほんとに。