別役実『風の研究』

長いの読んだ後なので童話集でも読もうかってことで。で、別役実の童話は初めて読んだのだけど、いやー、これもいいなあ。この奇妙に寂しい感じは癖になりそうな。あんま面白くないのもあるけど、シュール過ぎてほとんどギャグの領域に踏み入ってるように思える「理髪師誘拐事件」なんてとても好きだし、全編冗談まみれ（のつもりで作者も書いたものと推定される）だけどラストはこう、愛と祝福に溢れた感じになってふわーな「赤ずきんちゃんの森の狼たちのクリスマス」も印象的。
でも、この童話集中のベストはやはり「マヨネーズのように哀しい」だなあ。これは凄い。ほとんど完璧。だってほんとにマヨネーズのように哀しいんだもん！こんなラブストーリー、いや、僕はこれラブストーリーだと思うんだけど、こんなラブストーリーはこの人にしか書けないものなんだろうなあ、と思うばかりで。みみずをこんなに泣けるモチーフとして使えるってのは壮絶なまでの感性だよ。全く。