歌野晶午『安達ヶ原の鬼密室』

ああん、もう、歌野晶午って奴は!大好きだよ。全く。どうしようもない。どうしてこんなに……。この人は『葉桜の季節に君を想うということ』を読んで以来僕の中の萌え作家ランキング(1位は石崎幸二でよっぽどのことがない限り不動)をぐんぐん急上昇していってたのだけど、これでダメ押しされた気分に。もう歌野萌え!って言うしかないじゃないか。どうしてくれるんだよ。ほんとに……。
とにかくこの長編だか連作集だかオムニバスだかよくわからんミステリに盛り込まれている試みのなんと無邪気さを感じさせることか!実験的なことをやっていると言っても山口雅也みたいな嫌味ったらしさもないし、柄刀一みたいに真面目すぎたりもしないし(あれはあれで好きなのだが)、これに萌えないでどうするよ。ミステリが好きってこういうこと(こういう作品を書いてしまうこと)だと僕は思うんだけどなあ。こないだの『たったひとつの』とかもそうだったけど。もうこの無邪気さ、あるいはある種の稚気だけでもう満腹。なのでこの趣向ゆえにネタが早い段階で読めやすいとかそんなことはもうどーでもいいの。ひたすらに作者の思惑に萌えるばかりですー。あ、萌えと言えば二番目のお話、「The Ripper with Edouard」のビルに萌えたなあ。歌野の書くキャラってけっこう僕のツボをついてくるもんだから。全く憎らしい。
で、一つ気になったのだけど、最後に出てくる“ひげのおにいさん”って信濃譲二だよな、きっと。こういう遊び心も好き。