西澤保彦『彼女が死んだ夜』

来月文庫化する『依存』を読むために安槻市シリーズ(という呼び方でいいのだろうか)を一通り読んでおこうという計画を発動させてみた。既読なのは『解体諸因』のみだったもんで。で、とりあえずこれが第一弾。
西澤作品の中でも一二を争う評判の良さだけあって、真相が語れることによって今まで見えていた事件の様相が鮮やかに塗り変えられるっつーんですか、そういう味わいは実に良い。それぞれの人物が事件において果たしていた真の役割(えー、この人がこんなことを的な)がわかったときはふわーって感じですよ。そういうのはほんとこの人巧いなあ。でも一番最後のどんでん返しはいらいない気がするなあ。あれでちょっとがっくり来た。
さらに、個人的にはどうも微妙な部分が二つ三つ。まず、ハコちゃんの両親の戯画的なまでの娘の束縛っぷりが無ければこんな事件は起こらなかったのではー、みたいな独白が最後らへんにあるのだけど、それ、戯画的なのは小説の登場人物だからじゃん!つまり作者のせいってこで……うん?待てよ。これはもしかして、“小説の登場人物という立場ゆえに被害を被る主人公”という図を浮き彫りにしたかったのか?そういうメタな趣向なのか?うーん、でもどっちにしてもスッキリしないなあ。
あと、“ストッキングに詰め込まれた髪の房”というものに個人的に妙にオブジェ性を感じてしまったので、それが意味するところを明かされると神秘性が解体されたような気分でなんだかなー、だった。まあ、ミステリって元々そういうもんなんだけどさ。


というわけで次は『仔羊たちの聖夜』を読みます。