ジョン・ディクスン・カー『三つの棺』

カー初読み。カーの作品の中で一番名が売れている(ように思う)だけあって、提示される「謎」はとても魅力的。こりゃあミステリが好きな人ならどんなトリックが使われたのかしらーってなもんで気になりますよもう。でもその魅力的な謎に見合うだけの解決が提示されてるかっていうと微妙。これは僕が最近のミステリをいろいろ読んでからいわゆる古典本格ミステリを読むという逆転した順番で読んでるからというところに大きな原因があるのだけど、この謎解きにはやはりあまり意外性を感じるというわけにはいかなくってですね。具体的に言えば、を使ったトリックなんてもういい加減食傷気味なわけですよ。あと、時計が狂ってたって何それー。
まあそんな感じでいろいろ不満を感じつつも、第二の事件における真相が語られた瞬間、浮かび上がる構図なんてとても綺麗だし、最後解決編が終った後に起こる出来事についての描写がなんだかどうでもよさげで、そこは微笑ましいなあ、などと思ったりでそれなりに楽しめた。あと、有名なメタな台詞とか。
きっとこのカーって人はフェル博士っていう探偵役についても特に思い入れはないんだろうなあ、と思うと少し愉快だったりもした。一作読んだだけで判断するのもなんだが。