オールド・ボーイ

酒癖も女癖も悪い妻子持ちのオ・デスはある日突然誘拐され、そのまま15年間監禁される。監禁が解かれてさ迷う彼の前に犯人はあっさりと現れるが、自分が監禁された理由を探るため、世話をしてくれる若い女ミドと共にデスは調べを続ける……というお話。
あの泥臭い『JSA』(→感想)の監督作がカンヌだの何だので評価されたということで訝りながら観てみたら、やっぱりこれも泥臭い話でした。悲劇の構図が少しずつ明らかになるってな筋立ても『JSA』と同じだし、この原作はこの監督向きだったのかも?知らんけど。ともあれ、面白かった。オチはなんとなく読めてしまうのだけど、そこに至るまでの筋道がやたらと紆余曲折しているので退屈しないで観られる。主人公があの監禁ビルの廊下で格闘するのを横スクロールアクションみたいな構図で延々映すシーンなんかは映像的にもなかなか愉快なことやってると思うし。あと、テーマ曲の使い方にグッと来た。
キャストも健闘していて、一番いいなと思ったのが犯人役のユ・ジテ。かなり堂に入った屈折人間っぷりで、ラストの種明かしのシーンに至ってはあの貧相な顔で完璧に画面を持たせてるのだから偉い。ミド役のカン・ヘジョンはロリ系シンガーみたいな可愛さ。デス役のチェ・ミンシクはルックスに説得力があるのはいいんだけどちょっと力入りすぎな感も。

コリン・デクスター『キドリントンから消えた娘』

二年前に失踪したバレリーという娘の捜索を死んだ同僚から引き継いだモース警部。彼に渡されたのはバレリーから家族への一通の手紙だった。しかし、彼はバレリーは既に死んでいるという直感を抱く……というお話。
デクスター初読み。これを読んでやっと法月綸太郎『誰彼』の推理はデクスター風って意味がわかりました。ただ、あののりりんと比べるとモース警部はえらく無神経で鈍感で、推理が外れてものりりんみたいにいちいち凹んだりしない(というふうに僕には見えた)ところが特徴的であり、面白いところかなあと。最終的に解決がもたらされるのも、事件のほうがモース警部のムチャクチャさにうんざりして降参した、という印象を受けるくらい。頭のおかしい人が頭のおかしい人なりにルーチンワークをこなす様を眺めて楽しめばいい小説かな。
それにしてもモース警部はエロオヤジですな。