友桐夏『盤上の四重奏』

最高最高。『白い花の舞い散る時間』が気に入った人は絶対読むべき、な番外編。『白い花〜』の重要キャラを主人公に据えてあの物語の前日譚を裏から語る、というファン向けの趣向だけでなく、これ一作の読み心地まで『白い花〜』に似て甘く毒々しくてうっとり。
奇妙な館の外観を備えた学習塾が舞台な今作は今度こそまんま『麦の海に沈む果実』であって、世界観を形作る情景描写なんかではさすがに恩田陸に譲るものの、不穏なムードの身も蓋もない高め方やミスリードを誘う心理描写が意地悪でたまらない。幾重にも渦巻く陰謀の中で芽生えたロマンスが、それでも暗く光る様はすごく素敵。シリーズ続刊を切に希望しておきます。