ロアルド・ダール『あなたに似た人』

ご存知“奇妙な味”の代表作家の代表短編集。初めて読みました。今読むとさすがにネタを知っている話があって興を削がれたりもするのだけど、読めないということは全くなかった。最後に収録されている「クロウドの犬」なんて、ダメ男日記のつもりで読んでると所々に妙な形で底無し沼が口を開けているという、唯一無二な迫力が味わえる。
全体的に、お話の中で起こっていることはそれほど大したことではないのに、それに不似合いなほど緊張感が盛り上がってしまうというズレた演出、そしてその演出が不気味な雰囲気を醸し出す、というところが面白かった。「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」や「毒」なんかは特にその路線で好き。