フランク・コットレル・ボイス『ミリオンズ』

母親を亡くした小学生兄弟の弟ダミアンは守護聖人マニア。彼が聖人の真似をしてこもっている段ボールの小屋に、ある日、何十万ポンドの大金が降って来た。数日後にユーロの切り替えを控え、二人の兄弟はお金の使い方に頭を悩ませるが……というお話。
脚本家の作者の初の小説で、だいたいこんなキャリア*1がある人らしいけれど……うわ、一つも見たことないや。ともかく、この小説について言えば、主人公ダミアンが実に可愛らしく、あざとくなく造形されていて楽しく読めた。ダミアンが聖人の話ばかりして無自覚のうちに周りの大人を困らせる様がとても愉快。ただ、お金があると全てがうまくいかない、って話なのはいいんだけれど、そこをもっと突き抜けたハッピーエンドに持っていってほしかった。これだと締めが弱い感じがする。
本作品は既に映画化もされているらしく、監督はなんとダニー・ボイルということで期待は膨らむ。最後にあの人が出てくるとこは映画で観るといかにも泣けそう、とか、そんなことを考えながら読むのも楽しい。