アダプテーション

脚本家チャーリー・カウフマンは焦っていた。ランを巡るノンフィクション本を脚色する仕事を受けたものの、遅々として進まないのだ。双子の兄弟ドナルドが楽しげに自分の脚本を仕上げてゆく様を見るにつけ彼の焦燥はさらに増し……というお話。
これは面白かった。この監督と脚本家の前作『マルコヴィッチの穴』よりも脚本のねじくれ具合が際立っていて好き。自虐ギャグとリアルぶったダメ人間描写でひたすら引っ張る前半は「あー、はいはい」ってな感じで見ていたのだけど、後半何故かサスペンスやらラブやらが導入されて来る展開は全く先が読めなくて妙なスリルが満点。「ダメ人間がダメじゃなくなる話」と見てもどこまで本気なのかさっぱりわからなくて、このおふざけ具合は心地がいい。
一人二役で主演のニコラス・ケイジはネタみたいなキャスティングに甘んじずきちんと好演してて偉い。双子が本当に別々の人のように見えるもの。ある種の嫌がらせじゃないかと思うくらい若々しくキレイに撮られている助演のメリル・ストリープクリス・クーパーもさすがに巧い。よくこんな役にリアリティを持たせられるもんだ。