アーヴィン・ウェルシュ『フィルス』(背景色でのネタバレ含)

エディンバラの警察官ブルース・ロバートソンは筋金入りの不良警官。不潔でヤク中で黒人もゲイも大嫌いで、おまけに女をヤリ捨てるのが大好き!友人を陥れるの大好き!しかしそんな彼も最近は女房がいないせいか今一つ元気がなく……というお話。
トレインスポッティング』(→感想)に続いて読むのはまだ二冊目なのに、僕はもうすっかりこの作家のファンのような。『トレイン〜』と同じく印象の似た(今作の場合、主人公の鬼畜っぷりを示すような)エピソードが羅列されて、印象似てるはずなのにどんどん違う印象になってくるあたりが面白い。腹の中のサナダムシによって語られる(!)主人公の身の上とか、終盤の主人公に対する同僚の接し方とか、そこだけ取り出せば陳腐ですらあるストーリーがたまらなく痛切に感じられるのも、そこに至るまでの鬼畜描写あってこそ。いやあ、あの不良警官がこんなに“孤独”に見えるとは。
それにしても、まさかアーヴィン・ウェルシュの本に叙述トリックがあるなんて思いませんでしたよ。そのへん映画化*1の際に不都合になるだろうに、どうするんだろう。

*1:あとがきによると決定してるとか